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ひきこもりに「恋愛」はできない?

現在観測 第22回

「ひきこもり」という言葉を耳にした時、あなたはどのようなイメージを抱きますか。自分とはかけ離れたイメージでしょうか。それともどことなくシンパシーを感じるでしょうか?
家の中から出れず、誰とも喋らず、対人関係も苦手、まして出会いも少なく恋愛とはほど遠い存在……と思われるかもしれません。けれども、彼・彼女たちの思いを長年追いかけ続けてきたジャーナリスト、池上正樹氏には違った風景が見えるようです。

「ひきこもり」というと、テレビや漫画、映画などではカーテンを閉め切ってジメッとした部屋にこもるイメージで描かれるために、きっと「恋愛」とは、無関係な存在だろうと思うかもしれない。

しかし、筆者が約18年にわたって「ひきこもり」界隈を取材し、当事者たちから毎日寄せられるメールのやりとりを通して見えてくるのは、「恋愛したい」と望みを抱いている人は少なくないこと、社会に出てきて「恋愛する」人も普通にいるということだ。

 

◆それぞれの姿勢

もちろん長年、ひきこもっていればひきこもっているほど、まず「現状からどのように抜け出すか?」が最優先の課題になるために、たとえ恋愛の望みを胸に秘めていたとしても、性差を超えて仲間とのつながりに主眼を置く人たちが多い。とっくの昔に、恋愛願望を自ら封じ込めて、あきらめてしまった人もいる。

「ふだんから恋愛に臆病ですし、面倒なんです」

「恋愛は、そっちのけですね」 

そう照れを隠すように、最初から恋愛関係に距離を置く人たちもいる。とくに、男性にその傾向が強い。

 

一方で、恋愛に積極的な姿勢を見せる当事者たちの例を紹介してみよう。

「恋愛をテーマに話をしたい」

そんな思いから、ひきこもり当事者や支援者、関心のある人たちなどが集う対話の場で、いち早く「恋愛」をテーブルテーマの1つに設けた当事者がいた。今後、自分たちが主催して「婚活イベント」のような会を開きたいとも言う。

また、10年余りひきこもり状態にあった男性は、アルバイトを始め、自分で自分自身の生計を立てられるようになってから、初めてこう思えるようになったという。

「いま叶えたいことは、彼女をつくりたい。できれば結婚もしたいと思っている」

とはいえ、リアルな人間関係や会話が苦手で、孤立するタイプの人たちにとって、出会いの機会は限られてくる。出会いの機会があったとしても、とくに自分から話しかけることができない男性にとっては、恋愛へのハードルも高い。

前出のアルバイト男性も、それまで出会いに関しては、ほぼ皆無の状態だった。そこで彼女が欲しいという願望から、最近、婚活パーティーのイベントに参加した。結局、会場の片隅で1人静かに佇むだけで帰ってきたものの、着実に抵抗がなくなっていく自分がいるという。

このように、当事者たちのなかには「恋愛のことをもっとオープンに話したい」とか、「婚活パーティに参加したい」という人もいる。そして控えめながらも、普通に「恋愛」したいと望んでいるいることが窺える。

◆これまでにない出会い方の登場

上記の男性のように自ら出会いの場とされる場所に赴くケースもあるが、最近はひきこもり当事者会やひきこもりに関心のある多様な人たちのイベント、その後に開かれるような懇親会、「フェイスブック」などのSNS、ネット上のチャットなどが出現し、出会いの場として機能し恋愛関係に発展したケースも知っている。

これ以上の詳しいことは、本人たちから叱られるのであまり書けないものの、当事者たちが横につながって社会に発信し始めた時代を反映してか、その出会い方も多様化してきた。これは、「ひきこもり」という言葉が注目され始めた20年ほど前と比べると、ずいぶんイメージも変わってきた感じがする。

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池上 正樹

いけがみ まさき

フリージャーナリスト

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~プロフィール~

1962年、神奈川県生まれ。通信社勤務を経て、フリーのジャーナリストに。97年からひきこもり問題について取材を重ね、当事者のサポート活動も行っている。

おもな著書に『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『ドキュメント ひきこもり』(宝島社新書)、『大人のひきこもり』(講談社新書)、『痴漢「冤罪裁判」』(小学館文庫)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)などがある。現在、ダイヤモンドオンラインにて「「引きこもり」するオトナたち」を連載中。



(連絡先)otonahiki*gmail.com *を@に変えてお送りください。


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